2025年、観光業界でひときわ注目されているのが「インド人観光客の急増」です。
旅行予約サイト・アゴダの最新調査によると、日本はインド人旅行者が選ぶ海外渡航先として前年より68%も関心が上昇し、最注目国として浮上しました。特に大阪の人気は前年比158%増と、東京・京都に並ぶ観光地として急成長しています。
コロナ禍からの回復期にある日本の観光市場にとって、このニュースは明るい追い風です。これまで中国・韓国・台湾といった近隣諸国からの観光客に依存していたインバウンド市場が、多様化・多国籍化へと進みつつあります。背景にはインド国内の経済成長、旅行需要の高まり、円安など複数の要因が絡み合っており、日本の観光業界にとっては新しい「成長の種」とも言える動きです。
インド人観光客の増加はなぜ?
インドは世界最大級の「旅行潜在市場」
インドは人口14億人を超える世界最大級の国であり、そのうち中間層・富裕層が急増しています。経済成長に伴い、「海外旅行は特別な体験」から「ライフスタイルの一部」へと意識が変化。インドの旅行産業全体は毎年約10%のペースで拡大しており、世界の観光市場にとって無視できない存在になっています。
これまでインド人旅行者は、イギリス・アメリカ・シンガポールなど英語圏や歴史的に馴染みのある国を選ぶ傾向が強くありました。しかし近年は、日本・韓国・タイなどアジアの新しい渡航先への関心が高まり、観光需要がシフトしています。
日本旅行が人気を集める理由
- 文化的魅力:伝統と現代が融合する日本の都市や文化が「一度は体験すべき」と評価されている。
- 食の楽しみ:寿司・ラーメンなどの日本食ブームはインドでも強い人気を持ち、実際に現地で味わいたいというニーズが高い。
- 治安と安心感:世界的に見ても治安の良さが群を抜いており、特に家族旅行で評価が高い。
- 買い物需要:日本製の家電・化粧品・雑貨はインド国内でも信頼度が高く、旅行先でのショッピング目的も大きい。

数字が示す急成長
アゴダのデータによれば、日本へのインド人旅行関心度は前年比で68%増加。特に大阪は158%という驚異的な伸び率を記録しました。これは、東京・京都の定番ルートに加えて「食の都」「USJがある都市」としての魅力が評価されている結果です。
今なぜ日本が注目されるのか?
大阪の急浮上
今回の調査で特に目立ったのは、大阪の人気急上昇です。前年比158%増という数字は、東京や京都の伸びを上回る勢い。背景には、
- ユニバーサル・スタジオ・ジャパン(USJ)の存在
- 道頓堀や新世界といった街歩き観光の魅力
- 「食い倒れの街」と呼ばれる多彩なグルメ体験
が大きく寄与しています。インド人旅行者の口コミやSNS発信を通じて、大阪が「日本旅行の中心都市」として位置づけられ始めています。
東京・京都の安定した定番人気
もちろん、東京と京都の人気も依然として健在です。東京は「最新都市」、京都は「古都の伝統」として、対象的な魅力を体験できることが大きな特徴。特にインドでは「一度の旅行で全く違う日本を体験できる」という点が支持されています。
また、ショッピングの中心地としての東京、世界遺産や寺社巡りの京都は、訪日旅行プランに欠かせない存在です。
円安効果とコストパフォーマンス
もう一つの追い風が、円安による割安感です。インドから見ても、日本旅行は「手が届くラグジュアリー」として魅力的に映っています。同じアジア圏の旅行先と比べても、体験の質に対してコストパフォーマンスが高いことが評価されています。
「体験型」消費へのシフト
インド人旅行者は買い物だけでなく、体験型のアクティビティに強い関心を持っています。
- 着物体験や茶道などの文化体験
- 温泉旅行や自然観光
- サブカルチャー(アニメ・ゲーム)関連スポット
これらの「日本ならではの体験」が、インド人旅行者をさらに惹きつけています。

課題やリスク
受け入れ体制の不十分さ
インド人観光客が急増する中で、日本側の受け入れ体制にはまだ多くの課題があります。特に大きいのは食文化への対応不足です。
インドでは宗教や文化の背景から、ベジタリアン、ヴィーガン、ジャイナ教食など特殊な食事制限を持つ人が多くいます。しかし、日本国内の飲食店やホテルではその対応が十分でないことが多く、観光体験の満足度に影響する可能性があります。
言語の壁
英語対応が進んでいる都市部でも、ヒンディー語をはじめとするインドの言語対応はほとんど整っていません。旅行先での案内不足や意思疎通の困難は、トラブルや不満の要因となり得ます。AI翻訳アプリなどの普及は助けになりますが、現地でのホスピタリティを高めるためには、多言語対応スタッフの育成が急務です。
混雑とオーバーツーリズム
人気観光地に観光客が集中することによる混雑問題も懸念されています。京都・嵐山や東京・浅草などでは既に観光客増加による生活環境への影響が問題視されています。インド人観光客の増加が加わることで、観光公害と呼ばれる「オーバーツーリズム」がさらに顕在化する可能性があります。
観光地の持続可能性
短期的には観光需要の増加は歓迎される一方で、長期的に見れば持続可能性を考慮する必要があります。文化財の保護、環境への影響、地域住民との共生など、バランスを欠けば観光業そのものの信頼を損なうリスクがあります。観光庁や地方自治体は、今後「観光の質」を高める取り組みを強化していく必要があるでしょう。

今後の展望・注目点
直行便の拡充とアクセス改善
インドと日本を結ぶ直行便はすでにデリーやムンバイから運航されていますが、今後さらに増便や新路線の開設が期待されています。例えばバンガロールやチェンナイといった南インド主要都市との直行便が整備されれば、訪日旅行の裾野はさらに広がります。航空会社にとっても巨大市場インドと人気観光国日本の組み合わせはビジネスチャンスであり、交通インフラの整備は訪日需要を押し上げる重要な要素となるでしょう。
富裕層マーケットの拡大
インドの経済成長により、特に若年富裕層が急速に増えています。彼らは「体験に価値を置く世代」であり、ラグジュアリーホテル、特別な食事体験、地方の秘境観光など、高付加価値の旅行商品に投資を惜しまない傾向があります。日本の観光事業者にとって、これまで欧米富裕層に向けて展開してきた商品をインド市場向けにローカライズするチャンスです。
地方観光への波及効果
大阪・東京・京都が人気の中心である一方、インド人旅行者の関心は徐々に地方へも広がりつつあります。北海道の大自然、沖縄のリゾート体験、長野の温泉などは、「日本らしさ」をより深く味わえる体験として注目を集めています。観光庁のインバウンド戦略でも「地方創生×観光」が掲げられており、インド市場の開拓が地方経済の再生につながる可能性があります。
デジタル・マーケティングの強化
インドはSNS利用率が高く、特にInstagramやYouTubeでの情報発信が旅行意欲に直結します。観光庁や自治体、旅行会社はインド人インフルエンサーとのコラボレーションや、多言語対応のデジタルコンテンツを整備することで、さらなる訪日需要を喚起できます。「旅の前から体験が始まる」という発想でマーケティングを展開することが、今後のカギとなるでしょう。

まとめ ― インド人旅行者の急増をサクッと解説
2025年、日本はインド人旅行者にとって最注目の渡航先となり、前年比68%の関心増加を記録しました。特に大阪は158%増という驚異的な伸びを見せ、東京・京都と並ぶ「ゴールデンルート」の一角へと成長しています。
背景には、インド国内の経済成長・中間層の拡大・海外旅行需要の高まり、そして円安によるコストパフォーマンスの高さといった要因があります。さらに、文化的体験や食、買い物といった「日本ならではの魅力」がインド市場で強く評価されていることも大きな追い風です。
ただし、急増する需要に対応するためには、ベジタリアン対応や多言語対応、混雑緩和、持続可能な観光戦略といった課題に向き合う必要があります。これらをクリアすれば、インド人旅行者の増加は日本観光の新たな成長エンジンとなり、地方観光や新産業の活性化にもつながるでしょう。
今後は、直行便の拡充やデジタルマーケティングの強化により、訪日インド人観光客の裾野がさらに広がる見通しです。「多様性を受け入れ、体験価値を提供できるか」が、日本の観光立国戦略の次なるカギになるといえます。








