2025年6月、国土交通省が「置き配を標準サービスとし、手渡しには追加料金を課す可能性がある」と発表したことが話題になりました。
背景にあるのは、宅配業界が直面する再配達の多さやドライバー不足といった深刻な課題。これまで当たり前だった「対面での荷物受け取り」が、いま見直されようとしています。
この記事では、新たに検討されているルールの概要と背景、そして私たちの生活にどんな影響があるのかをわかりやすく整理していきます。
置き配が標準ってどういうこと?
「置き配」とは、玄関先や宅配ボックスなど、あらかじめ指定した場所に荷物を置いて配達を完了する方法です。
これまでは手渡しが基本でしたが、今後は、特別な理由がない限り、荷物は「置いて届ける」が当たり前になる――そんな未来が現実味を帯びてきています。
ちなみに現在、宅配便の共通ルールである「標準運送約款」には、置き配に関する明確な規定はありません。その代わり、以下のようなルールが定められています。
- 荷物は「受取人に交付すること」が原則
- 不在時は「持ち戻り」または「再配達」が基本
- 配達完了の基準は「受領印または署名」による確認
それが今回、国土交通省がこの約款を見直し、「置き配を標準サービスとする」方向で議論を始めたことで、宅配の“当たり前”が大きく変わろうとしています。
現在は明確な統一ルールがないため、Amazonのように置き配を基本とする企業もあれば、受取人の同意を前提とする企業もあり、各社が自社の判断で運用スタイルを決めているのが実情です。
| 運送会社 | 置き配の基本方針 | 備考 |
|---|---|---|
| Amazon(自社配送) | 原則「置き配」が初期設定 | ユーザーが手渡しを希望する場合は設定で変更可能 |
| ヤマト運輸 | 基本は手渡し。 置き配は事前の同意が必要 | 「指定場所配達サービス」として利用者が個別に指定 |
| 佐川急便 | 原則手渡し。 置き配には利用者の同意が必要 | 玄関前などへの配達も可能(状況に応じて対応) |
| 日本郵便(ゆうパック) | 原則手渡し。 宅配ボックス利用は可 | 宅配ボックス設置先であれば置き配的な対応も可能 |
なぜ今、置き配が標準化されるのか?
国土交通省が置き配の標準化を検討している背景には、物流業界全体が直面する2つの課題があります。
- 再配達の多さ
- 深刻なドライバー不足
中でも再配達率は、目標とされる6%以下を上回る約10%が全国平均となっており、ドライバーへの負担が大きな問題となっています。
こうした状況を受けて、「在宅・不在に関わらず荷物を届けられる」置き配を標準化することで、再配達の削減と業務の効率化が期待されています。
国としては、宅配サービスを今後も持続可能な形で提供し続けるために、置き配を制度として明確に位置づける必要があると判断したのです。
新ルールで私たちの生活はどう変わる?
置き配が標準になることで、私たちの暮らしには良い面と気になる面の両方が出てくるかもしれません。
以下に主なポイントを整理してみます。
- 在宅していなくても荷物を受け取れる
- 受け取り時間を気にせず自由に過ごせる
- 配達員とのやり取りが不要になる
- 玄関先での盗難やいたずらのリスク
- 雨や風で荷物が濡れる・汚れる可能性
- 手渡し希望の場合、追加料金がかかる可能性
特に注目されているのが、手渡しに追加料金がかかる可能性です。
追加料金の具体額はまだ未定ですが、参考となる料金例を考えると、100〜300円程度の上乗せになる可能性もありそうです。
「安心の手渡しにはこのくらいなら払ってもいい」と感じる人もいれば、「これまで無料だったのに…」と戸惑いや違和感を覚える人もいるでしょう。
まとめ
宅配の世界では、「再配達を減らす」「人手不足に対応する」ための新しい仕組みとして、置き配の標準化が検討されています。
そんな中で、「手渡しは追加料金がかかる」というニュースは、私たち一般消費者にとって、他人事とは思えない強いメッセージとして届きました。
宅配ボックスの設置や、駅・コンビニの受取サービスの利用など、自分に合った受け取り方を見直すきっかけになるのかもしれませんね。









